密かに迫る国家の「姥捨て」

こんにちは。
リアルインサイト 鳥内浩一です。

第3回動画の解説でお伝えしていますが、 実は、もう一つ追加動画を配信
予定です。

その目的は、 第1回〜第3回の動画で登場した日本の生存戦略を考える上で
必要になるさまざまな視点・コンセプトを整理してお伝えすることと、第3回
動画
の「ボディ・ポリティック」というコンセプトで捉えた場合、この新型
コロナ・ショックを克服し、日本の生存・再興を果たす上でもう一つ、重要
な視点が必要になるからです。

追加動画の公開は、 あさって24日を予定しています。
それまでに第三回動画を観ておいて下さい。

さて、前回の記事で、 「国民の分断」こそが新型コロナが生み出す最大の
リスクである、というお話をしました。

また、 「Go To トラベル」キャンペーンも、 連日なされる東京の新規感染者数
報道も、 その分断を生み出す方向でなされており、 実際に国民の意識に分断が
起きている、 ということをお伝えしました。

そして、 第三回動画の中では明かされていますが、 4月時点で、日本には
もっと極端な (そして危険な)分断発想が生まれて きています。

独立行政法人・経済産業研究所が 4月23日に発表した下記の「提言」です。

・社会的・経済的損失を最小にするには分離型自粛緩和が良いが、
 それは医療崩壊を招くリスクがある。

・その場合、後期高齢者は重症化しても救急病棟やICUに入れないことを、
 政策として定めておくべき。

・医療崩壊の際、PCR検査をする余裕もないだろうから、感染の判断は症状の
 診察のみで行う。結果として、感染していないのに切り捨てられる高齢者が
 出ても仕方ない。

・遺族から訴えられる危険を回避すべく、「医療機関には訴訟を起こせない」
 措置を取っておくのがよい。

まさしく国家レベルの「姥捨て」であり、 全く許容し難い話ですが、危機的
事態においては、 「全体を守るために」という建前のもと、 それが容易に正当
化されうる、 と佐藤先生は警鐘を鳴らします。
それが実際に スウェーデンで行われた政策であり、全体のために弱者を犠牲に
することを 公然と主張することはできないため、

「我々は誰の命であれ、他の人々より大事に扱うことはしない」

というような表現で煙を巻くことになる、と。

経済産業研究所の提言はさらにひどく、 医療崩壊が起こった時に弱者を犠牲に
しよう、 という話です。
それが高齢者の方やその家族・親族の目にこの政策はどう映るか想像してみま
しょう、 と佐藤先生は訴えます。

自分達のおじいちゃんやおばあちゃんが コロナに感染し、 国や自治体の方針で
病院に入れてもらえなかったのみならず、 それに対して裁判を起こすことはできないと法律や政令、条例で決まった。
それを経験した人が、 国に対して一体感を持つことができるか、と。

まさに亡国への道であり、こんなことは何があっても防がなければなりません
が、 「Go To トラベル」キャンペーンや 連日なされる東京の新規感染者数報道
の中で、 実際に国民の中に分断や差別意識が芽生えているという事実が、 その
可能性が0ではないことを示しています。

では、私達は何を考えなければならないのか。
一言で言えば、 今だけ、自分だけのことを考えるのではなく、 全ての国民、国全体の未来を考える。
まさに今回の企画のご案内ページに書いている、
「自分の命と同様に国の安否を案じる心」
が必要なのです。

これは第一回動画の中で藤井先生が 強く言われていたことでもあります。
その前提に立てば、私達の考え方が変わり、 政治もメディアも変わっていくはずです。

では具体的に、公衆衛生の観点からは、 今回のコロナをどう捉えるべきなのか。
前回お伝えした通り、 インフルエンザや風邪と同じく 感染拡大は当たり前、
コロナウイルスとは常に付き合い続けて いくものという前提に立った上で、

・高齢者や慢性疾患のある「高リスク者」の方をどれだけ感染から守るか、  (それ以外の致命率や重症化率は極めて低い)
・感染速度をどの程度に抑えるか、
・感染者を守るための医療資源をどう確保するか、
・特に医療崩壊を絶対に起こさないこと

を焦点にする必要があり、 新規感染者数ばかりを見るのではなく、

・抗体保有者数
・感染者の年齢層
・基礎疾患の有無
・現在患者数/重症者数/対策病床数
・感染者1人からの二次感染者数(数)

を見守っていく必要があるのです。

順に簡単にご説明しますと、 抗体保有者数の調査は、新型コロナウイルスに
感染した人の割合を推定するもので、厚生労働省やソフトバンクなどがすでに
実施しています。

厚生労働省調査
https://www.carenet.com/news/general/carenet/50292
ソフトバンク調査 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202006/565972.html

PCR検査は、主に発症者に対して選択的に行われ、 無症状者や検査をしてい
ない人々を含む 実際の感染者数を反映したものではないためこの調査が意味を
持ちます。

厚生労働省の調査によれば、6月1~7日時点で東京都の抗体保有0.10%(1,971名中2人)。
大阪府は0.17%(1,783人中5人)。

ただサンプル数がもっと多いのは ソフトバンクの調査で、 医療従事者を除く
全国の店頭・オフィス・ コールセンター従業者に調査を行った結果、(調査
期間5/12〜6/8)東京は全国の中でも突出して保有率が高く0.37%(11,217名中
42名)になっています。

かなり乱暴ですが、間を取って仮に0.2%を 5月末時点での東京の抗体保有者数
とすれば、 東京都人口1400万人に対し感染者は2.8万人。
同時点での東京都のコロナ死者数は300名なので、 致命率は約1.07%となります。
季節性インフルエンザの致命率はざっくり0.1% (年間感染者1000万人・死者数
(超過死亡含む)1万人) なので、 このデータからは、 季節性インフルエンザ
の約10倍の毒性と言えます。

また推定抗体保有者数から年代別の致命率を見れば、
80代 9.23%
70代 4.7%
60代 1.6%
50代 0.35%
40代 0.16%
30代 0.03%
であり、基礎疾患の有無を評価してはいませんが、 50代以下にとっての毒性は
かなり低いと言えます。

また、そもそもコロナにかかるかどうかという感染リスクは、季節性インフル
エンザが流行年に10人に1人罹っていることを考えれば東京都で140万人。
一方コロナの感染者数は3〜5月で2.8万人で、仮に6月以降の1ヶ月半でこれが
倍になったと しても5.6万人です。

感染力の強さはインフルエンザ同等というのが日本医師会の見解ですので、
コロナの毒性がインフルエンザの10倍ならば、例年のインフルエンザ感染者数
の10分の1 である14万人になった時に初めて、 インフルエンザ同等の「怖さ」
になります。

さらに言えば感染リスク自体は 現状の感染者数から考えればインフルエンザの10分の1にも及ばない訳ですから、メディアの報道がいかに異常かは理解できる と思います。

ただ、
・今だけ、自分だけのことを考えるのではなく、全ての国民、国全体の未来を
 考える
・高齢者や慢性疾患のある「高リスク者」の方をどれだけ感染から守るか
という観点から考えるとこれだけでは不十分で、医療崩壊を防止するという視点
から見れば、東京都の新型コロナ対策病床数4800床中1976床が現在使用されて
いる状況(41.1%)
で、重症者数は14名と、まだ医療崩壊という段階にはありません。

また、感染拡大速度の指標としては、 感染者1人からの二次感染者数(実効
再生産数) を見る必要がありますが、 7月20日時点の東京都の再生算数は1.21
となっています。
「8割おじさん」西浦教授の42万人死亡シナリオの 試算前提は、実効再生算数を
2.5としていました。
この数値前提だと、 感染者1人が平均2.5人に伝染させるため、1人が1日のうち
に2.5人に感染させると乱暴に仮定すれば、 10日間で新規感染者数は2.5の10乗、
つまり9537倍になります。

これが7月20日時点の東京の1.21 であれば10日間で6.7倍、 7月頭の1.6程度で
あれば110倍 になります。

感染を収束させるためには、これを1以下にしなければなりませんが、 医療崩壊を防ぐという意味では、この数値と実際の新規感染者数・ 重症患者数を見なが
ら、その増加ペースが医療キャパシティを超えないようにコントロールしていく
必要があります。

そういう意味で、現時点では医療キャパシティに余力があるものの、 感染拡大
傾向にはあるため、 これを超えてくることが予想されると、医療崩壊を防ぐため
に、 再度緊急事態宣言を発令し接触を減らす意思決定が行政からなされるで
しょう。

公式Facebookより

そうならないようにするために、 私達国民が行うべきことの第一は、こうした数値を適切に評価しながら、 各々が感染予防を徹底することであり、
「コロナはただの風邪」などと言って問題を軽視することや、東京を「汚染地域」のように 見立てた差別的行動を取ることなどでは決してありません。

政府として何を行うべきかも同様に、 医療崩壊を防ぎ、弱者を守るために、
現実を的確に把握しながら、医療資源の適切な確保と適切な感染防止対策、
適切な経済対策を行っていくことです。

それがどんなものであるかは、第一回〜第三回映像で明かしている通りであり、
あさって公開する追加動画でも明かしますので、 そうした方向に政治を動かせる
よう、 ぜひ繰り返しご覧になり、知識を深め、見識を高め、 周囲や行政に訴え
る力として頂ければと思います。

自分達の未来を「人任せに」などできません。

追加動画の公開は、あさって24日の予定です。
それまでに是非公開中のすべての動画と、記事もこちらで繰り返し学んで下さ
い。

動画サムネイル 藤井先生
動画サムネイル 中野先生
動画サムネイル 佐藤先生

それでは、またご連絡します。
本企画がお役に立てることを切に願っています。

リアルインサイト 鳥内

コメント

  1. コロナ禍は歴史的な大転換期。これからはまさに変化に対応する企業、組織、個人が必要とされ、活躍していくと思います。日本再生のため貢献していきたいです。

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